2009年8月9日日曜日

「カッと」なった時の処方箋 -EQ―こころの知能指数

EQ―こころの知能指数 を読了しました。
自分というもののコントロールの難しさと大切さを教えてくれる良書でした。

人間の脳は進化の過程で他の生物より大きく発達した大脳新皮質を手に入れました。
大脳新皮質の奥には、生命を維持する上で重要な働きをもつ原始の脳が活動しています。
原始の脳は生命の維持を目的としているので、危険が起きたとき等に即座に反応します。衝動的な行動を引き起こすのは原始の脳の働きが大きいわけです。

現在の人間社会では大昔と違いそれほど大きな危険に晒されることはありません。
しかし、原始の脳は今も人間の行動を支配してしまうことが多く、これにより様々な弊害が起きていると言うのが、筆者の問題提起の一つです。
私自身も、ついカッとなってひどいことを言ってしまったりすることがあります。
この、「カッと」なった瞬間、原始の脳に支配されてしまっています。

本書では自分の心をコントロールすることの難しさを表すお話が紹介されています。少し長いですが引用します。

日本の古い話だ。血気にはやるサムライが禅僧に、地獄とは何か極楽とは何か、と問う。しかし禅僧はサムライの問いを一笑に付す。「この無骨物が。お前なんぞに関わる暇は持たぬ」。体面を傷つけられたサムライは激怒し、刀を抜いて大声をあげた。「無礼な!切り捨ててくれる!」
「それを地獄と申す」。禅僧は静かに答えた。
怒りに狂った自分の心をズバリ突かれて我に返ったサムライは、刀を鞘におさめ、禅僧に向かって一礼した。
禅僧はふたたび口を開いた。「それを極楽と申す」。


本書では「カッと」なる脳の仕組みを科学的に解明するとともに、どのようにすれば情動に流されないかを夫婦生活や仕事での場面を例に提案してくれています。
情動に流されない心を作るためには、子供のころからの環境作りが大切だそうです。
子をもつ親としては、育児をしていく上で非常に参考になりました。
また、苦労はしますが大人になってからでも情動に流されない心を作ることは可能だそうです。

情動に流されないためのキーワードとして「共感」という言葉が随所にでてきます。
これまで「共感」の大切さを主張する様々な本に出会ってきましたが、本書はより具体的で、まさに共感を得ることができました。
自分をコントロールできていないと感じる方はもちろん、自分をきちんとコントロールできている自信のある方も、是非手に取って欲しい一冊です。

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