2009年3月28日土曜日

記憶は増強するものでなく、選択するもの。-記憶と情動の脳科学

記憶と情動の脳科学を読了しました。
この本は記憶を徹底的に科学した良書です。
長期記憶、短期記憶の概念は、記憶力に興味のある方なら既知の話題かもしれないです。
睡眠により長期記憶が整理される事も、多くの方が知っている話だと思います。

そのメカニズムと研究の足跡にまで触れてくれている点で、理解が進みます。
同時に、脳の研究が如何に難しいものであるかを教えられます。
証明したい事以外の要素を如何に排除していくか、科学者達の知恵に感服させられます。

記憶力とは一般的に良ければうれしいものと考えられがちです。
著者は記憶力増強を謳い文句にしている薬をとりあげ、記憶力増強一辺倒な世に警笛を鳴らします。
記憶力が良すぎる人間が記憶の中でしか生きていけない不幸をとりあげ、忘れることもまた、大切であると説いています。

そして、覚えることを選択する事が重要であると言葉は、私の心に深く響きました。
「選択」という難しい行為こそ、人間が人間らしくあるための手段なんだと改めて考えさせられました。




記憶と情動の脳科学 目次
第1章 記憶の神秘
第2章 習慣と記憶
第3章 短期記憶と長期記憶
第4章 記憶を長持ちさせる
第5章 忘れにくい瞬間
第6章 歪曲されるがなくならない記憶
第7章 メモラビリア——まとめ

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